資産形成というと、多くの人はNISAや投資信託、高配当株を思い浮かべるでしょう。もちろん、それらを学ぶことは大切です。でも僕は、販売の仕事をしてきて思うことがあります。投資を覚える前に、もっと知っておいた方がいいことがある。
それは、「企業は何を売って利益を得ているのか」という資本主義の仕組みです。
販売業では「お客様第一」という言葉をよく耳にします。もちろん、お客様に満足していただくことは重要です。
しかし、会社が毎日見ている数字は違います。
お客様第一は、あくまでカスタマーに見せる企業姿勢です。
売上。利益。利益率。客単価。会社は利益がなければ存続できません。つまり企業にとって、お客様を大切にするのは利益を生み続けるためでもあります。
これは冷たい話ではありません。株式会社という仕組み上、ごく自然なことです。販売の現場に立っていると、その構造がよく見えてきます。
例えば、高級車。例えば、数千万円の注文住宅。もちろん買う人は、その価値を感じて購入しています。夢を叶える人もいるでしょう。家族の幸せのために決断する人もいます。その選択を否定するつもりはまったくありません。
ただ、企業側から見ると、少し違う景色もあります。
車が一台売れる。メーカーが利益を得ます。販売店も利益を得ます。ローン会社は金利を得ます。自動車保険会社も利益を得ます。車検があります。タイヤ交換があります。オイル交換があります。修理があります。
買った瞬間から、長いお金の流れが始まります。
住宅も同じです。ハウスメーカー。住宅ローン。火災保険。固定資産税。エアコン。給湯器。キッチンやお風呂などの住宅設備。家電の買い替え。外壁塗装。リフォーム。
一つ契約すると、その後何十年にもわたってお金が動き続けます。
企業は未来に受け取るはずだったお金を、ローンという仕組みで今日の売上へ変えています。未来の収入が、現在の利益になる。これが資本主義の強さです。
一方で、私たちは何を手に入れたのでしょうか。
車は時間とともに価値が下がります。
家も新築の瞬間から中古になります。
もちろん、住む価値や快適さはあります。しかし、お金を生み出す資産とは少し性質が違います。維持費もかかります。メンテナンスも必要です。毎月の返済も続きます。
ここで一つ、考えてみてください。車のローンを組んだのは誰でしょうか。住宅ローンを35年組んだのは誰でしょうか。毎月遅刻せず、体調が悪くても会社へ行き、給料日に返済を続ける契約をしたのは誰でしょうか。
それは企業ではありません。私たち自身です。だから企業は安心して事業計画を立てられます。未来の売上が、ある程度見えているからです。
販売の仕事をしていて思いました。企業が本当に欲しいのは、一度きりの売上ではありません。毎月働き、毎月返済し、長く利用してくれるお客様です。少し言い方を変えるなら、企業にとって最大の資産は、工場でも店舗でもありません。未来の収入を約束してくれる契約なのかもしれません。
だから僕は、資産形成を始める前に、この仕組みを知ってほしいと思っています。難しい投資商品を覚える前に、
なぜローンが勧められるのか。
なぜ広告は消費を促すのか。
なぜ企業は長期契約を歓迎するのか。
その構造が見えるようになるだけで、お金との付き合い方は変わります。
家を買うことも。車を買うことも。否定はしません。でも、その契約によって未来の自分が何を約束するのかは、一度立ち止まって考えてほしいのです。資産形成とは、お金を増やす技術だけではありません。未来の自分の時間と労働力を、何に使うかを選ぶことでもあります。僕は、それこそが資産形成の第一歩だと思っています。
トータルライフプランナー ダボ猫プロフィール
販売の仕事をしながら、資産形成や暮らし、お金との付き合い方について実体験をもとに発信しています。販売の現場で見えたことを、消費者の目線でわかりやすく伝えることを大切にしています。難しい金融知識よりも、「仕組みを知ること」をテーマに、読者の人生に役立つ記事を書いています。
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