「暴落が怖くて投資できない」という気持ち、よくわかります。ただ、過去のデータを見ると、「怖いときに続けた人」と「やめた人」の間には、かなり大きな差がありました。
今回は架空のIFストーリーとして、1987年のブラックマンデーから月1万円だけS&P500に積み立てた場合を想定して振り返ります。
まず「イナズマの瞬間」とは何か
本題に入る前に、一つ言葉を説明させてください。株式市場では、長期間のうちに「たった数日だけ、異常なほど急上昇する日」があります。 これを「イナズマの瞬間」と呼ぶことがあります。 いつ来るかは誰にもわかりません。予告もなく、突然です。
J.P.モルガンが長期データをもとに公表している分析では、S&P500を約20年間保有し続けた場合と、「最もよく上がった上位10日間」だけ市場の外にいた場合を比較すると、最終的な資産がほぼ半分に減るという結果が示されています。
そして、その「イナズマの日」のほとんどは、大きな暴落の直後に集中しています。 つまり、「怖いから売った」タイミングと、「急騰が来るタイミング」が、歴史的にほぼ重なっているのです。
舞台は1987年10月——ブラックマンデー1987年10月19日(月曜日)。
ニューヨーク株式市場で、NYダウが1日で22.6%下落しました。これは現在でも「1日あたりの下落率」として史上最大の記録です。翌20日には日経平均も14.9%の下落。世界中の市場が連鎖しました。テレビや新聞は「世界恐慌の再来か」という見出しを並べました。原因は複合的なものでした。ドル安への不安、インフレへの警戒、そして当時普及し始めたコンピューターによるプログラム取引が「売りが売りを呼ぶ」連鎖を加速させました。
IF ── もし、この月から積み立てをはじめていたら
毎月1万円をS&P500に積み立てる。それだけです。暴落しても、ニュースが騒いでも、変えない。
翌々日——イナズマが来た
月曜に歴史的な暴落があった2日後、10月21日(水曜日)。 日経平均は1日で2,037円(約9.3%)急反発しました。 NYダウも急回復に転じます。FRBが「市場に資金を供給する」と即座に表明し、パニックが急速に落ち着いたためです。
月曜に売り逃げた人は、この「イナズマ」を受け取れませんでした。
暴落日(10月19日):NYダウ −22.6%イナズマ日(10月21日):急反発 +約9%日経平均の回復:暴落前水準へ 約6ヶ月
そしてリーマンショック(2008年)
もしも積み立てを続けていたなら、2008年にも同じ試練が来ます。2008年9月15日、米大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻しました。 サブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)を組み込んだ金融商品が世界中に広まっており、その崩壊が金融システム全体を揺るがしました。
S&P500は2007年10月の高値から2009年3月の底まで、約56.8%下落しました。積み立て評価額が最も落ち込んだのはこの時期です。
ただし、2008年10月前後の最も暗い局面に、+10%超の急騰日が複数回集中しました。
S&P500の高値回復:約5年後(2013年3月)
5年というのは長い時間です。この間、積み立てを「やめなかった人」は、底値近辺でも毎月1万円ずつ買い続けていました。 結果として、安い時期にも口数を積み上げていたことになります。
コロナショック(2020年)
——そして、最速の回復2020年2月から3月にかけて、新型コロナウイルスのパンデミック宣言を受け、S&P500は約5週間で33.9%下落しました。 歴史上でも類を見ない速さの暴落でした。
2020年3月16日(月曜日)にはNYダウが1日で12.9%下落し、3月23日に底をつけました。
しかしその翌営業日(3月24日)から急反発が始まります。 大規模な経済対策への期待が一気に広がったためです。
最大下落日(3月16日):NYダウ −12.9%(2,997ドル安、当時の史上最大の下げ幅)イナズマ日(3月24日前後):S&P500が数日で+10%前後の急回復S&P500の高値回復:わずか約5ヶ月後(2020年8月)
コロナショックは、歴史上もっとも速く暴落し、もっとも速く回復した局面でした。 3月に売った人は、5ヶ月後の回復を受け取れませんでした。
IFストーリーの結末——過去のファクトとして
さて、1987年10月のブラックマンデーから、2020年末まで、毎月1万円をS&P500に積み立て続けた場合。約33年間の積立総額は396万円です。
過去の実績をもとにした試算では、この期間の最終評価額は、おおよそ2,000万円前後になります(円換算・為替レートや積立タイミングの前提により幅があります)。
ブラックマンデーのとき、リーマンショックのとき、コロナショックのとき。 3回の「やめる理由」がありました。 それでも続けた場合の数字が、これです。
重要なお断りこの記事で取り上げた数字と回復の経緯は、すべて過去のファクトです。 今後の市場が同じように動くことを示すものでも、示唆するものでも、保証するものでもありません。 現在進行中の暴落や下落局面が、過去と同じように回復するかどうかは、誰にもわかりません。 投資の判断や手続きはご自身でお願いします。
市場に居続けた、それだけのこと
特別なことは何もしていません。 暴落のたびに「底を読んで」買ったわけでも、 賢く売り抜けたわけでもありません。ただ毎月1万円を入れて、あとは放っておいた。 それだけの話です。過去のデータが教えてくれるのは、「正しいタイミングで動いた人が勝った」ではなく、 「動かなかった人が、イナズマを受け取り続けた」という事実でした。
👉️プロフィール トータルライフプランナー ダボ猫
長年、製造業で交替勤務をしていました。数年前に小売業へ転職し、現在は地方の店頭に立っています。 資産形成をはじめたのは転職前後のころ。7年ほどになります。 大きなことは何もしていません。インデックスの積立と、少しの個別株。それだけです。 このブログ「ダボ猫チャート」では、働く人間のリアルな視点から、お金のことを書いています。 むずかしいことは書けませんし、書きません。手続きも判断も、読んだ方が自分でやるものだと思っています。
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