最近よく見かける言説があります。「今の日本は、20年前のアメリカに似ている」というものです。

NISAを始めた人は資産が育ち、始めなかった人は置いていかれる——そういうトーンで書かれた記事が多いですが、肝心なことが抜けていると感じています。

現実は、もっとごちゃごちゃしています。
でも同時に、知ろうとするだけで、まだ十分に間に合う年齢の人がいることも事実です。
この記事では、きれいごとを省いて書きます。

まず、数字で現実を見てみます

新NISAは確かに広がっています。2024年12月末時点でNISA口座数は約2,560万口座となり、2023年末から約436万口座増加しました。

でもここで少し立ち止まってほしいのです。
日本の人口は約1億2,431万人に対し、NISA口座の開設数は約2,044万人。日本人のおよそ6人にひとり、16%がNISA口座を開設しているという計算になります。 (これは新NISA開始前の数字ですが、現在も全体から見れば少数派です)

さらに見落とされがちな事実があります。口座を開設しているにもかかわらず「0円」、つまり一度も買付していない割合が全体の38%を占めているのです。

「NISAやってる」と言っている人の4割近くが、実は口座を作っただけ。それが現実です。

お金の話は、誰もしていない

なぜこうなるのでしょうか。理由のひとつははっきりしていて、日本ではお金の話がタブーだからです。
金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査2022年」によると、金融知識に自信があると答えた人の割合は日本でわずか12%。米国の71%と比べると、その差は歴然としています。 (Smbc-cf)

隣の人が何を積み立てているか、老後にいくら準備しているか——

そういう話を職場でも家族でも、日本人はほとんどしません。

「お金の話をするのは卑しいことだ」と今でも感じている人が多く、そうした文化的な空気が若いうちからお金を学ぶ機会を奪っています。 (Xsrv)

これは謙虚な文化の話ではなく、情報格差を生む構造的な問題です。 知っている人だけが動き、知らない人は何もしないまま時間が過ぎていく。それだけのことです。

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年金の話は、もっと知られていない

「老後は年金があるから」と思っている人は多いと思います。では年金が実際にいくらもらえるか、把握している方はどれくらいいるでしょうか。

現実の数字を見てみましょう。
厚生年金(基礎年金含む)の平均年金月額は全体で14万6,429円。

男性が16万6,606円、

女性は10万7,200円です。 (Fpcafe)

女性の数字を見て、「それだけか」と思った方は正直な感覚だと思います。
しかも「平均」には注意が必要です。女性の場合、月15万円以上の受給はわずか10.3%と非常に厳しい状況にあります。 (Stellarpartner)

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転職経験がある人、非正規雇用の期間があった人、育休や離職で空白がある人——そういった方は、この平均よりさらに低くなる可能性が高いです。

さらに深刻なのはここです。2025年度の公的年金支給額は名目上1.9%引き上げられましたが、年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」も3年連続で発動されており、物価を考慮した実質ベースでは目減りとなりました。 (Nomura Research Institute)

名目は増えているのに、実質では削られている。これが今の年金の現実です。

これが「高齢者の現実」というデータがあります

少し重い話をします。でも、知っておいてほしいことです。

年齢層別・性別の貧困率を見ると、高齢期と若年期(20〜24歳がピーク)という2つの「山」が存在します。特に女性においては、75歳以上の貧困率が最も高く、25%を超えます。 (Jimcontent)
4人に1人です。
就労形態別に見ると、男女ともに「正規雇用」の貧困率は年齢層を通じて低い一方、女性は非正規雇用の場合、年齢とともに貧困率が上昇する傾向があります。 (Hinkonstat)

これは「他人事」の数字ではありません。現役世代の今の働き方と選択が、そのまま高齢期の経済状況に直結しています。
今の高齢者の多くは、投資という選択肢がそもそも身近になかった時代を生きてきました。でも今の30代・40代が高齢者になる頃、「知らなかった」は通用しない環境になりつつあります。

現金は「安全」ではなく、「確実に目減りする」

「投資は怖い。現金が安心」という感覚はわかります。暴落で30%下がる可能性を考えると、触りたくない気持ちも理解できます。
でも今の日本では、現金を持ち続けることも「リスクを取っている」ことと同じです。

大和総研の分析によると、家計の「現金・預金」の実質値が大きく減少しており、名目値と実質値の乖離は1997年以降で最も大きい水準に達しています。 (WOR(L)D)
銀行口座の数字は変わっていないのに、その数字で買えるものは着実に減り続けています。「現金で持っているから損していない」は、もう正確な表現ではありません。

「20年前のアメリカ」との、決定的な違い

「今の日本は20年前のアメリカに似ている」という話には、重要な但し書きがあります。

アメリカの人口は2006年当時から現在まで増え続けています。企業は国内市場の成長を前提に動け、経済のパイ自体が膨らむ力がありました。
日本は逆です。人口減少はすでに始まっており、労働力も内需も縮んでいく方向にあります。「国全体が豊かになる」という前提が、構造として弱いのです。

だからこそ——国が豊かにしてくれるという期待を持ちにくい分、個人で資産を準備することの意味が、アメリカ以上に大きいとも言えます。

それでも、まだ間に合う人がいます

ここからが本当に伝えたいことです。
今の30代・40代前半の方には、時間があります。
複利という仕組みは「長く続けた人ほど効果が大きくなる」ものです。30歳から月3万円を年率5%で積み立てた場合、65歳時点での資産は約2,900万円になる計算です(あくまでシミュレーション上の数字ですが)。

同じことを40歳から始めると、約1,600万円。10年の差が約1,300万円の差になります。
「まだ若いからいい」と思っている間に、時間は使われていきます。でも「もう遅い」という年齢でもありません。

大事なのは完璧な知識を持ってから始めることではなく、現実の数字を一度でも直視することです。

まず、自分のねんきん定期便を開いてみてください。毎年誕生月に届く、あの封筒です。そこに書いてある見込み額を見た瞬間、「それだけか」と感じる人が多いはずです。
その感覚が、一番正直な出発点になります。
NISAをやるかどうかより前に、現実の数字を知ったかどうか——そこから全部変わると思っています。

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知ろうとすること自体が、すでに動き始めていることです。


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